貸倒損失にかかる消費税額の調整
売掛金その他の債権が貸倒れとなったときは、貸倒れとなった金額に対応する消費税額を貸倒れの発生した課税期間の売上げに対する消費税額から控除します。消費税のかかる売上が生じた場合には、まだ売掛金として回収がされていない場合にも「預かったとされる消費税額」を納めています。しかし、その債権が貸倒れてしまい実際に回収することができなかった場合には、消費税を預かることができなかったわけですから、「預かったとされる消費税額」として納めた消費税を、貸倒れが生じた年度の消費税額から差し引くことができることになっています。
控除の対象となる貸倒れは、消費税の課税対象となる取引の売掛金その他の債権(以下「売掛金等」といいます。)に限られます。
貸倒れとして認められる主な例は次のとおりです。
- 更生計画認可の決定、再生計画認可の決定などにより債権の切捨てがあったこと。
- 債務者の財産状況、支払能力等からみてその債務者が債務の全額を弁済できないことが明らかであること。
- 法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で、一定の要件に該当する基準により債権の切捨てがあったこと。
- 債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その債権の弁済を受けることができないと認められる場合に、その債務者に対し書面により債務の免除を行ったこと。
貸倒れの金額に消費税及び地方消費税が含まれている場合には、貸倒れの金額の合計額に108分の6.3を掛けて貸倒れとなった売掛金等に含まれる消費税額を計算し、その消費税額につき1円未満の端数を切り捨てた金額が課税売上げに対する消費税額から控除する消費税額となります。
貸倒れとして消費税額を控除するためには、債権の切捨ての事実を証する書類その他貸倒れの事実を明らかにする書面の保存をしておくことが必要です。(国税庁のHP参照)
<注意すべき事項>
1.税率について
貸倒れた消費税額を計算する際、現在の税率で計算していませんか?
控除が認められる金額は「納めた消費税額」をもとに計算されるため、消費税が3%や5%だったときの債権については、その当時の税率で計算します。
2.控除漏れが多いケースについて
簡易課税制度を適用しているからといって、貸倒れに係る税額控除を失念していませんか?
簡易課税制度を適用して仕入率による概算の消費税額を計算している場合にも、貸倒れによる消費税額の控除は認められます。
3.もし回収できた場合
貸倒れの処理を正しく行ったあと、回収できた場合の処理について
貸倒れによる税額の控除を受けた債権について、その後回収することができた場合には、その回収できた金額のうち消費税の相当額については改めて納め直す必要があります。
2016/07/20 | 消費税