相続税申告時の預り敷金の評価について

今回のさいたま市のお客様の相続税申告では、預り敷金もあるし、山林の評価もあるし、結構いろいろもりだくさんです。

被相続人が不動産を貸している賃借人から敷金や保証金を預かっている場合、この預り敷金や保証金は賃借人に返さないといけない債務とされますので、相続財産からマイナスできます。預り敷金や保証金の計上もれがある場合には、相続税を払いすぎている可能性があります。

したがって、今回は相続税の債務に預り敷金を含めますが、そのままの金額で評価していいのかという問題が発生します。

判例によると、預り敷金については、返還するまでの期間に応じた複利原価率で、評価(割引計算)する必要があります。

判例の詳しい説明を下記に記載しますので、興味があればご覧になってください。

<賃貸ビルに係る保証金債務の額について、無利息等であることを理由としてその経済的利益の現在価値を控除することは相当でないとした事例 裁決事例集 No.24 – 146頁>

 ビルの賃貸に際し、賃借人から預託を受けた保証金債務は、形式上長期かつ無利息等であるが、それは、本件保証金の利息と本件賃貸ビルの賃貸料の額の一部とを相殺して単にそのように約定されているものであり、実質的には本件保証金債務金額から控除されるべき経済的利益の額はないものと認められるから、単に形式的に無利息等であるからとして債務控除の適用上経済的利益を毎年享受するものとしてその現在価値を控除して当該債務の額を算定することは相当でない。

<無利息の敷金に係る債務控除額は、敷金の金額から、通常の利率による返還期までの間に享受する経済的利益の額を控除した金額によるのが相当とした事例>

  1.  本件敷金が無利息債務に当たるのは明らかであり、これを承継した請求人らは、当然に通常の利率による利息相当額の経済的利益を本件敷金の返還期までの期間享受するのであるから、その債務控除すべき金額については、敷金の金額から、請求人らが返還期までの間に享受するこの経済的利益の相続開始時の額を控除した金額によるのが相当である。
  2.  相続税法第22条が債務の評価について相続開始時の現況による旨規定していることからすれば、債務の評価に当たっては、相続開始時において客観的かつ具体的に確認されない事柄を影響させることは妥当ではないのであるから、相続開始日において、賃貸借期間の満了日前に本件契約の終了することが確実と認められる事情が存しない限り、賃貸借期間のうちの残存期間をもってこの経済的利益を算出するのが合理的である。
  3.  本件敷金のような長期無利息債務の評価に用いる通常の利率は、統一的な指標となり得る長期金利等を基準とし、相続開始時に弁済期までの金利の動向等を考慮して求めるのが相当であるから、他の財産の評価方法とのバランスをも考慮すれば、相続開始月以前10年間の長期国債(10年)の応募者利回りと長期プライムレートの平均値を基礎とし、年5%とするのが相当である。

<無利息の預り保証金及び敷金に係る債務控除額は、その元本価額から、通常の利率による返還期までの間に享受する経済的利益の額を控除した額によるのが相当であるとした事例>

 控除すべき債務が弁済すべき金額の確定している金銭債務の場合であっても、その弁済すべき金額が当然に当該債務の相続開始時における消極的経済的価値を示すものとして課税価格算出の基礎となるものではなく、金銭債務について、その権利の具体的内容によって時価を評価するのと同様に、金銭債務についてもその利率や弁済期等の現況によって控除すべき金額を個別的に評価しなければならないのであり、控除すべき債務の金額は必ずしも常に当該債務の金額と一致するものではない。
無利息で預託されている金銭債務(以下「無利息債務」という。)であれば、これを承継した相続人は、通常の利率による利息相当額の経済的利益を弁済期が到来するまでの期間享受することになり、その享受する経済的利益の相続開始時における現在価値に相当する額だけ相続又は遺贈により取得した経済的価値の減殺要因が小さくなることから、無利息債務の相続開始時の評価額は、通常の利率と弁済期までの年数から求められる複利現価率を用いて相続開始時現在の経済的利益の額を計算し、無利息債務の元本額からこの経済的利益の額を控除した金額とするのが相当である。

2017/04/30 | 相続税

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