個人の確定申告が必要な場合と不要な場合

所得税の確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得の金額から所得税等の額を計算して確定させる手続です。

源泉徴収された税金や予定納税額などがある場合には、この確定申告によってその過不足を精算します。

原則として、その年の翌年2月16日から3月15日の間に確定申告をする必要があります。コロナ渦の時は、4月15日まで延長されていましたが、あくまでも例外です。

1 .確定申告の概要

確定申告では、収入から必要経費、更に各種控除項目を控除して、税額を算定します。

所得税法では、所得を次の10種類に区分していますが、以下のような収入がある方は、確定申告が必要となる可能性が高いと考えた方がいいです。

  所得の種類 説明
1 利子所得 預貯金や公社債の利子並びに合同運用信託、公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託の収益の分配に係る所得です。
2 配当所得 株主や出資者が法人から受ける配当や、投資信託(公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託以外のもの)及び特定受益証券発行信託の収益の分配などに係る所得です。
3 不動産所得 不動産所得とは、土地や建物などの不動産、借地権など不動産の上に存する権利、船舶や航空機の貸付けによる所得(事業所得又は譲渡所得に該当するものを除きます。) です。
4 事業所得 事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業から生ずる所得です。ただし、不動産の貸付けや山林の譲渡による所得は、原則として不動産所得や山林所得になります。
5 給与所得 給与所得とは、勤務先から受ける給料、賞与などの所得です。
6 退職所得 退職所得とは、退職により勤務先から受ける退職手当や厚生年金基金等の加入員の退職に基因して支払われる厚生年金保険法に基づく一時金などの所得をいいます。
7 山林所得

山林所得とは、山林を伐採して譲渡したり、立木のままで譲渡することによって生ずる所得です。ただし、山林を取得してから5年以内に伐採又は譲渡した場合には、山林所得ではなく、 事業所得又は雑所得になります。

8 譲渡所得 譲渡所得とは、土地、建物、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することによって生ずる所得、建物などの所有を目的とする地上権などの設定による所得で一定のものです。  ただし、事業用の商品などの棚卸資産、山林、減価償却資産のうち一定のものなどを譲渡することによって生ずる所得は、譲渡所得になりません。
9 一時所得 一時所得とは、上記1から8までのいずれの所得にも該当しないもので、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外のものであって、労務その他の役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得です。 例えば次に掲げるようなものに係る所得が該当します。
(1) 懸賞や福引の賞金品、競馬や競輪の払戻金
(2) 生命保険の一時金や損害保険の満期返戻金
(3) 法人から贈与された金品
10 雑所得 雑所得とは、上記1から9までの所得のいずれにも該当しない所得です。
例えば次に掲げるようなものに係る所得が該当します。
(1) 公的年金、仮想通貨等
(2) 非営業用貸金の利子
(3) 副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)

控除項目には、以下のような項目があります。

 控除が受けられる場合控除額
雑損控除災害や盗難、横領によって損害を受けた時に適用される控除 
医療費控除一定額以上の医療費を支払った場合。生計を一にする配偶者その他の家族も含まれる。(注1)(支払った医療費-保険金などで補填される金額)ー10万円 ※その年の所得金額が200万円未満の人は所得金額×5%
社会保険料控除健康保険料、国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料、国民年金保険料、国民年金基金の掛金、厚生年金保険料などを支払った場合に適用される控除。生計を一にする配偶者その他の家族も含まれる。支払った保険料の合計
小規模企業共済等掛金控除小規模企業共済の掛金を支払った場合に適用される控除支払った掛金の合計額
生命保険料控除生命保険や介護医療保険、 個人年金保険で、支払った保険料がある場合に適用される控除一定の方法で計算した金額
地震保険料控除地震保険料を支払った場合に適用される控除一定の方法で計算した金額 (最高5万円)
寄付金控除ふるさと納税や認定NPO法人等に対して寄付をした場合に適用される控除「寄附金支出合計額」と 「所得 ×40%」のいずれか 少ない方-2,000円
障害者控除納税者や控除対象配偶者、扶養親族が障害者である場合に適用される控除一人につき、 ①障害者27万円 ②特別障害者40万円 ③同居特別障害者75万円
寡婦(寡夫)控除配偶者と死別または離婚して扶養家族がいる場合に適用される控除 ※寡夫控除は、2020年度分より、ひとり親控除に変更27万円 (一定の要件を満たす場合35万円)
ひとり親控除納税者がひとり親であるときに適用される控除 ※ひとり親控除は令和2年分の所得税から適用35万円
勤労学生控除学校に行きながら働いている場合に適用される控除 ※ただし、前年分の合計所得金額が75万円以下27万円
配偶者控除配偶者の合計所得が48万円以下の場合に適用される控除①一般控除対象配偶者:最大38万円 ②老人控除対象配偶者:最大48万円 (控除対象配偶者のうち年齢が70歳以上)
配偶者特別控除納税者の合計所得が1,000万円以下で、配偶者の合計所得が48万円以上133万円未満である場合に適用される控除配偶者の所得金額によって 最大38万円
扶養控除16歳以上の子供や両親などを扶養している場合に適用される控除①一般の控除対象扶養親族:38万円 ②特定扶養親族:63万円 (扶養親族が19歳以上23歳未満の方) ③老人扶養親族:最大58万円
基礎控除すべての人に適用される控除48万円(所得合計が2,4000万円以下の場合)

2.確定申告が必要となる場合

その年分の所得金額の合計額が所得控除の合計額を超える場合で、その超える額に対する税額が、配当控除額と住宅借入金等特別控除額の合計額を超える人は、確定申告をしなければなりません。

とはいえ、普通に収入がある人は、「その年分の所得金額の合計額が所得控除の合計額を超える場合で、その超える額に対する税額が配当控除額と住宅借入金等特別控除額の合計額を超える人」に当たりますので、原則として確定申告は必要になると考えて頂いてもよいかと思います。特に確定申告をする必要がある方を具体的に説明していきます。

A  個人事業主やフリーランスとして働いている人
税務署に開業届を提出していなくても、建設現場で働いている方や、インターネットを利用して、例えばメルカリ等を利用して収益を確定している人は、原則確定申告をする必要があります。 事業所得が48万円以下なら確定申告をする必要がないといいますが、所得は、収入から経費を控除して計算するので、これを把握するには専門家に知識が必要となってきますので、やはり確定申告をする必要があると思われます。
B 株やFXなどで収入がある人
株取引やFXなどの譲渡で利益を得た場合は、株式譲渡益課税制度に則って、譲渡益が48万円以上ある人は、確定申告をする必要があります。
C 不動産を売却したり、賃貸をしている人
不動産を売却した場合には、譲渡所得として確定申告する必要があります。アパート経営したり転勤となって自宅を賃貸して、賃貸収入を受けている人も確定申告をする必要があります。
D 仮想通貨売買や生命保険の解約などで所得がある人
生命保険の満期解約により、元本より多く収入を受け取った場合は、一時所得として、仮想通貨を売買して利益を確定した場合には、雑所得として確定申告する必要があります。
E 給与所得者でも確定申告する必要がある場合
医療費が10万円を超えている場合住宅ローン減税を初めて申請する場合副業で年20万円以上の所得がある場合副業が赤字の場合(注2)2か所以上で給与を受け取っている場合給与の年間収入金額が2,000万円を超えている場合不動産取引や株取引をしている場合ふるさと納税をした場合(注3)

3.確定申告が不要となる場合

(1) 給与所得の場合

給与所得者の場合は、年末調整だけで完結する人は確定申告をする必要がありません。

(2) 公的年金の受取額が400万円以下の場合

公的年金の受給者の中には確定申告が必要な人もいますが、公的年金の源泉徴収を受けていて、年収が400 万円未満、その他の所得が20万円を超えない場合は、確定申告の必要はありません。

(3) 源泉徴収ありの口座で株式売買をしている場合

証券会社で源泉徴収ありの口座で上場株式の売買をしている人は、売買時に源泉所得税を控除されるので、確定申告する必要はありません。

証券口座源泉徴収の有無売却益となった場合売却損となった場合
特定口座源泉徴収有り確定申告不要確定申告すべき
特定口座源泉徴収なし確定申告必要確定申告すべき
一般口座源泉徴収なし確定申告必要確定申告すべき

売却損が生じた場合は、確定申告をする必要はありませんが、将来3年間にわたり、売却損を将来3年間で生じる売却益と相殺処理ができます。また、複数の証券会社で株式の売買を行っていて、1つの口座では売却損を計上したが、もう1つでは売却益を計上した場合には、合算して確定申告をできるので、確定申告をしたほうがいいのです。

4.税理士に依頼した場合の相場

個人の確定申告は、報酬20,000円からお受けいたしますので、まずご相談ください。
EX. 給与所得2か所+住宅ローン減税申請 報酬20,000円

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この記事を書いた人

重松 輝彦

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公認会計士試験合格後、中央青山監査法人(現新日本監査法人)入所後、サマンサタバサジャパンリミティッド(㈱)、あずさ監査法人を経て、2012年 重松公認会計士事務所を開業。現在は、自由が丘税理士法人設立して、さいたま市と世田谷区に拠点を構え、記帳代行会社として、新潟県佐渡市に佐渡パートナーズ合同会社を設立する。

【注釈】

(注1)確定申告対象年の1月1日~12月31日までに支出した医療費が原則として10万円を超えている場合、確定申告を行うことで医療費控除を受けることができます。対象は「自己または自己と生計を一とする配偶者やその他の親族のために払った医療費」なので、個人ではなく家族単位での計算になります。

また、医療費控除の一環として、「セルフメディケーション税制」の適用により、2021年12月31日までは、1年間に購入したスイッチOTC医薬品の金額が1万2,000円を超える場合は、超えた部分について所得控除を受けることができます(8万8,000円が限度)。ただし、医療費控除との併用はできません。

(注2)給与所得を受け取っていて、不動産所得や事業所得が赤字になってしまった場合には、給与所得の金額と赤字分を相殺処理ができますので、給与所得で支払った源泉所得税の分を還付処理することが可能となります。青色申告をしていれば、給与所得がなくても、損失分を翌年以降3年間繰越可能となりますので、将来の収益と相殺処理することができます。

(注3)ふるさと納税とは、応援したい自治体に寄附をすることで、自治体ごとに返礼品がもらえる制度です。確定申告を行えば、ふるさと納税で寄附した金額から2,000円を引いた金額を所得から控除できます。もともと確定申告が不要な給与所得者は、寄附先が5か所以下の場合は「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を利用できます。

2021.11.18│重松輝彦

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