法人税の節税方法
法人税の法定実効税率は、課税所得800万円までは25%で、800万円超だと40%となります。
所得税のほどの累進課税ではないですが、できるだけ課税所得を800万円以下のするようにすることが望まれます。
ここでは法人税の節税方法についてご紹介させていただきます。
目次
1. 法人税の節税ついて
法人税の法定実効税率は、課税所得800万円までは25%で、800万円超だと40%となります。所得税のほどの累進課税ではないですが、できるだけ課税所得を800万円以下のするようにすることが望まれます。課税所得がゼロの場合は、国税の法人税はゼロとなりますが、地方税では赤字でも均等割が7万円ほどかかってしまいます。
赤字で累積損失を計上してしまった場合には、青色申告届出書を提出していれば、10年間繰越でき、将来の黒字と相殺して、法人税を減額することができます。
2.からは、節税項目ごとに説明していきます。
2. 領収書を捨てないで保管しておく
領収書がなければ、そもそも経費として計上することができません。中小企業では、交際費の損金計上が800万円まで認められていますので、領収書は、捨てずにとっておくようにいたしましょう。また、個人事業主の場合は、事業と個人の経費の選別が重要な論点となってますが、法人では代表取締役は人ですので生活費は発生しますが、法人自体には、生活費は発生しないので、個人事業主よりは経費は計上しやすいかと思います。
3. 役員報酬を調整する
役員報酬を多く計上すれば、その分法人の利益が減少し、役員報酬では、給与所得控除も受けられて、節税効果が高くなります。ただし、役員報酬を高くし過ぎると、所得税は累進課税のため税額が高くなってしまいますので、給与の収入金額では、年間600万円くらいにしておくと、かなり割安になります。600万円ですと、所得控除後は、436万円で更に基礎控除48万円を控除して388万円で、194.9万円まで5%、195万円から329.9万円まで10%、330万円から388万円まで20%の税率がかかります。
4. 事前確定賞与を設定する
役員報酬の他に事前確定賞与として役員に賞与を支給できる制度があります。事前確定賞与とは、事前に支給日と届出日を確定させて税務署に申請する必要があります。事前確定賞与は、事前に確定させた金額を全額受け取らなければ、損金として計上することができません。従いまして、業績がよければ賞与を受け取れば会社の利益は減額することができますし、逆に業績がよくなければ、賞与を受け取らないことも可能です。
5. 家族に給与を支給する
配偶者やご両親に仕事を手伝ってもらって、給与を支払うことで、その分法人の利益を減額することができます。配偶者の場合、個人事業主では専従者として給与を支給すると配偶者控除の対象外となってしまいますが、法人で配偶者に配偶者控除の対象内で給与を支給すれば、配偶者控除の対象となって代表取締役の所得税の減額にも貢献できます。ご両親に給与は支給する場合は、実際どの程度手伝ってもらえるか分からない場合が多いので、取締役になってもらって役員報酬として支払うようにすることがおすすめです。
6. 出張旅費規程を作成する
出張旅費規程を作成すれば、実費だけでなく出張手当の支給も受けることができます。出張手当の金額をいくらに設定するのがいいのかは会社の実情に合わせて、設定するのがいいかと思いますが、弊社では顧問先に出張手当をいくらに設定すべきかアドバイスしています。
出張手当のすごいところは、給与と違って受け取っても所得として認識されないので、所得税を支払う必要がないところです。また国内の出張手当ですと、消費税も含まれます。出張手当を計上できることが弊社では一番の節税手段だと思いますので、税務署でも認められる金額まで設定できるように取り組んでいます。国会議員の文書通信交通滞在費と近いかと思います。
出張旅費規程のサンプルは、最後に掲載します。(注1)
7. 倒産防止共済に加入する
倒産防止共済は、月額5千円から20万円まで積み立てることができ、最大800万円まで積み立てることができます。積み立てた金額については、法人の損金として計上できるので、その分利益が少なくなるので、節税対策として効果があります。
しかし、解約した時には益金として利益が増えますので、解約する時は役員の退職金を支給するなど、それ以上の損金を計上できる時に解約することがよさそうです。
倒産防止共済だけでなく、給与を高くして、小規模企業共済に加入することでも
8. 家賃を1年分前払する
決算日までに翌月からの地代家賃を最大1年分支払えば、翌事業年度の地代家賃を当事業年度の地代家賃として損金に計上することができます。そうしますと、最大2年分の地代家賃を計上することができるので、節税対策として有効な手続きです。
ただ、翌事業年度はその分地代家賃が減額となってしまうので、できれば当事業年度に一時的に大きな収益が発生するような時か翌期に車両等を購入するなど大きな経費を計上できるような場合に有効な手続きかと思います。
9. 未払の確定した費用を計上する(+決算賞与)
発生主義で経費を計上していたら、当たり前のこととして実施すべきことですが、決算期末までに経費の支払額が確定したが、まだ未払いの経費でも、それは当期に生じた損金として計上することができ、その分利益を減額させることができるので、節税として有効な方法と言えます。
これで一番利用できるのが、従業員に対する決算賞与かと思います。利益が多く出てしまった場合には、どうせ高い税金を払うなら、従業員に賞与として還元した方が、従業員のやる気も引き出せるかと思います。
税務調査では、売上高は絶対発生主義ベースで計上しないとアウトですが、経費のほうは現金主義で計上したとしても、特に問題になったりしません、商品を売ったりする場合には、売上高と仕入高の紐づけはチェックされたりします。
10. 自宅を社宅として会社名義にする
ご自宅を借りている場合には、法人名義の社宅として借りれば、家賃の半分を地代家賃として経費として計上することができます。個人事業主では、個人名義の賃貸物件を事業用として利用しているスペースの割合で地代家賃として計上できますが、法人では個人名義では社宅として計上することはできないので、法人名義の社宅として借りるようにしてください。
11. 年度落ちした中古車を購入する
中古車を購入すれば、減価償却の耐用年数を短くできるので、その分減価償却費を多く計上することができます。新車の耐用年数は6年ですが、2年落ちの中古車の場合耐用年数は4年になるので、同じ金額のものを購入すれば、中古車のほうが耐用年数は2年短くなるので、各年度の減価償却費は多く計上されます。長いスパンで考えると同じ金額なので、減価償却費として計上できる合計金額は同じなのですが、一時的に利益を圧縮したい場合には、有効な方法だと言えます。私の場合だと、中古車はあまり好きではないので、耐用年数は長くなったとしても新車を購入してしまいます。
12. 30万円未満の資産を即時償却する
法人で青色申告の届出書を税務署に提出していることが前提ですが、本来なら減価償却資産として、耐用年数の期間の範囲で減価償却費を按分するのですが、30万円未満の減価償却資産なら、取得時に全額を減価償却費として計上することができます。1会計期間に取得価額300万円までは利用限度額です。
10万円以上20万円未満の減価償却資産の場合には、償却資産税の対象外となる一括償却資産として、3年間で均等償却する方法がおすすめです。
13. 新しい会社を設立する
事業が複数ある場合や新しい事業を始める場合などがあれば、新会社を設立することが結果として節税に有効な手段となってきます。交際費の枠も倍になりますし、「軽減税率の適用」、具体的に言うと、課税所得が800万円を超えると法人税率が15%から25%になってしまうので、2社あることでの節税効果は高まります。ただ、会社を複数所有することで管理面は煩雑になってきますので、注意は必要です。
14. 雇用促進税制を活用する
一定の地域で無期雇用かつフルタイムの雇用者を1人増やすごとに税額控除を受けられる制度があります。一定の条件を満たせば法人税から一定割合の金額を控除できる制度ですので、事業の拡大を検討している場合は、雇用促進税制なども節税対策に有効です。これを初めて利用する場合は、社会保絵労務士にも相談した方がいいかと思います。
15. 所得拡大促進税制を活用する
所得拡大促進税制とは、個人所得の拡大を図り、所得水準の改善を通じた経済成長を達成するために、一定の要件を満たし前年度より給与を増加させた企業について、その増加額の一部を法人税から税額控除できる制度です。この制度を利用すれば、従業員の給与を増加のより、法人税を減額できるので、節税のための有効な制度であることは勿論ですが、従業員の雇用確保にも役立つものです。
ただ、実際に所得拡大促進税制を利用できるのは、中小企業では少ないかと思います。うちの顧問先ですと、だいたい売上高5億以上の会社で利益を確保している会社は効果が高いですが、税金をあまり払えない零細企業では、それほど効果はないかと思います。
所得拡大促進税制は、令和3年度に見直しが行われ、適用要件について継続雇用者給与等支給額による比較がなくなり、雇用者給与等支給額による比較のみとなり判定が容易になりました。また、新規雇用をした従業員等も判定に含めることができるため、企業はより積極的に新規雇用をすることができ、その適用期限が2年間延長されることになりました。
賃金要件の比較
令和3年4月1日以降 |
それ以前 |
①雇用者給与等支給額が前年度から1.5%以上増加 |
①継続雇用者給与等支給額が前年度から1.5%以上増加 ②雇用者給与等支給額が前年度を上回ること |
継続雇用者給与等支給額とは、継続雇用者に支払った給与等の総額をいいます。
また、継続雇用者とは以下の要件をすべて満たす者です。もう4月からは覚える必要もなくなるのですが、継続雇用者の要件を理解してもらうために記載しました。
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要 件 |
1 |
前事業年度および適用年度のすべての月分の給与等の支給を受けた国内雇用者である |
2 |
前事業年度および適用年度のすべての期間において雇用保険の一般被保険者である |
3 |
前事業年度および適用年度のすべてまたは一部の期間において高齢者雇用安定法に定める継続雇用制度の対象となっていない |
税額控除は、原則と特例で金額が異なってきます。
原則 |
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雇用者給与等支給額の対前年度増加額×15% | |
特例 |
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雇用者給与等支給額の対前年度増加額×25% <要件> 1.雇用者給与等支給額が前年度から2.5%以上増加 2.以下の①、②いずれかの要件を満たすこと ① 当期教育訓練費≧前期教育訓練費×110% ② 経営力向上の証明がなされたこと |
弊社でも、所得拡大促進税制を適用できる会社にはやってきましたが、継続雇用者の支給額の比較は、結構な手間でしたし、継続雇用者の比較では2.5%上がっていないの場合もありましたので、今度は利用する会社が増えていくかと思います。
(注1)出張旅費規程の記載例
出張旅費規程
第1条(適用)
この規程は、社員が社命により出張(研修を目的とする出張を除く)を行ない、職務を指示どおり遂行した場合の出張旅費等について定めたものである。
第2条(留意事項)
出張業務は日常活動の一つであるが、多額の経費を要するものであるので、自己管理を厳しくし、最少限の費用で最大の効果を追求するものとする。
第3条(出張の区分)
出張は日帰り出張、宿泊出張および特別出張の3種類とし、その定義は以下の各号に定めるところとする。
①日帰り出張
原則として勤務地より片道40kmを超す地域に移動し、宿泊を必要としない場合をいう。
②宿泊出張
出張の目的、時間及び距離にかかわらず、宿泊を必要とする場合をいう。
③特別出張
教育・研究のために出張する場合、または新規採用者およびその家族が居住地から勤務地に赴く場合の出張をいう。
第4条(旅費の定義)
本規程でいう旅費とは以下の各号のものをいう。
①交通費
②日当
③宿泊費
第5条(交通費、日当、宿泊料)
1.交通費は以下の各号のとおりとする。
①役員 グリーン車相当の運賃の実費
②その他の社員 普通運賃の実費
2.日当は出張の日数に応じ、宿泊料は実際に宿泊した夜数に応じて別表1により支給する。ただし、車中または船中に宿泊した場合は、宿泊料を支給しないで寝台料金の実費を支給する。
第6条(特別出張の取り扱い)
特別出張の取り扱いは以下のとおりとする。
①教育・研究のために出張を命ぜられた場合
(1) 交通費は原則として普通運賃の実費を支給する。
(2) 日当は宿泊を必要とする場合に限り、別表1により支給する。
(3) 宿泊料は教育、研究費に含まれていない場合に限り、実費を支給する。
②新規採用者およびその家族が居住地から勤務地に赴く場合
居住地から勤務地に至る交通費の実費を支給する。
第7条(出張の経路等)
出張の経路とその利用交通機関は、経済性を重視して選ぶことを原則とする。ただし、特別の理由がある場合はこの限りでないが、事前に上長の承認を得るものとする。
第8条(関係会社、団体等の会合のための出張)
関係会社、団体等の会合または研究、実習のため出張するときは以下のとおりとする。
①出張に要する実費を支給する。ただし、先方負担分については支給しない。
②日当は宿泊を要するときのみ、別表1により支給する。
第9条(上役者等との同行出張)
社外関係者または上役者と同行し、所定の宿泊料を超過する場合は実費を支給する。
第10条(長期出張の取り扱い)
同一地に長期間(1週間以上)出張したときの旅費は状況により、この規程によらないことがある。
第11条(海外出張の取り扱い)
海外出張の場合の取り扱いは、当該出張旅費規程の定めるところによる。
第12条(その他の費用の取り扱い)
出張中、やむを得ずタクシー等を利用した場合あるいは社用のために、要した通信費、運搬費等については請求により実費を支給する。
第13条(出張中の災害の取り扱い)
出張中災害に遭い、または傷病のため滞在を必要とした場合は、治療および滞在に要した実費の全部または一部を支給する。
第14条(傷病者の家族の旅費の取り扱い)
出張中傷病にかかり、滞在を必要とする者の家族が看護のため滞在地に旅行する場合は交通費、宿泊料の実費を支給することがある。
第15条(死亡者の遺族旅費の取り扱い)
出張中死亡、あるいは独身寮入寮中の者が死亡した場合で遺族が死亡地に旅行する場合は前条を適用する。
第16条(時間外勤務の取り扱い)
出張旅費を支給する者については時間外勤務の取り扱いは行わない。
第17条(出張期間中における休日の取り扱い)
出張期間中に休日がある場合は以下のとおり扱う。
①業務活動を行った場合
日当、外食費、宿泊費等通常のとおり支給する。出張日報により上長が承認したときは休日勤務とみなして振替休日を認める。ただし、休日を移動のみに使用した場合は休日勤務としない。
②業務活動を行わなかった場合
外食費、宿泊費のみを支給する。日当は支給しない。
第18条(出張手続および仮払)
出張をする場合はあらかじめ「出張予定表」を作成し、上長に提出しなければならない。そして、その承認を得たものに対して旅費の仮払をする。
第19条(出張報告および精算)
出張の報告および旅費の精算は、原則として出張報告書および出張旅費明細書を作成し、上長の決裁を経て、経理にて帰任後5日以内に精算しなければならない。役員はこの限りではない。
第20条(証明書等の提出義務)
出張者が業務上、余儀の支出をなし、その精算を行なうときは、その支出に伴う領収証を提出しなければならない。領収証等支払いを証明するものがない場合は原則としてその支出は自己負担とする。
第21条(その他)
本規程で処理できない場合は、その都度協議にて処理する。
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2022.01.20│taneC952